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Instagramの「いいね」を非表示にすれば、あなたはもっと“自由”になれる
WIRED 2021/06/09nstagramが投稿に「いいね」を表示しない機能を実装した。「いいね」のないフィードは革新を起こすわけではなく、ソーシャルメディアの経済を揺るがすわけでもない。だが、そこには投稿に“価値”の存在しない自由な世界が広がっていた。
人は数字でモノに価値をつけることを好む。ミルクの価格(1ガロン3.55ドル=約390円)、映画の評価(評価サイト「Rotten Tomatoes」で89%)、1時間の労働の価値(カリフォルニア州の最低賃金は時給15ドル=約1,650円)といった具合だ。
これに対して数字では表せない価値もある。結婚式で互いを見つめ合うふたりの視線や、楽しかった休暇のひとこまなどがそうだ。それでもソーシャルメディアでは、こうした瞬間にも数字で価値がつけられる。「いいね」の数だ。
Instagramのフィードで画像をダブルタップしても支払いは発生しないが、この行為は通貨と同じ意味をもつ。投稿や動画、あるいは個人のページ全体の価値までもが、何回閲覧され評価されたかで示されることになるからだ。
ソーシャルメディア大手は数年前から、自らのサーヴィスが生み出すインセンティヴについて頭を悩ませてきた。「いいね」によって若者が自分をセレブリティや友人と比較するようになり、自尊心を損なうことにつながるのだろうか。「いいね」の存在が、怒りや敵意をあおる投稿や性的に過激な投稿を誘発するのだろうか。「いいね」はボットや組織的なキャンペーンで、いとも簡単に操作されているのではないか──。
大手プラットフォームの多くが、この種の指標を非表示にしたり目立たなくしたりする取り組みを試験的に実施してきた。それでもデジタル生活のいたるところに、いまもしぶとく残っている。
こうしたなか、Instagramの事業責任者であるアダム・モッセーリは「いいね」を完全に排除することは合理的でないとの決定を下した。人は「いいね」されるのが好きなのだ。
改めて説明するまでもなく、「いいね」はインフルエンサーや各種ブランドを巻き込んで10億ドル単位の経済を支えている。そして数年にわたり「いいね」を廃止する実験を進めてきたInstagramは、その選択をユーザーに委ねると5月末に発表した。今後は初期設定では「いいね」の数を表示するが、フィードに表示される投稿や自分の投稿への「いいね」を非表示にする選択ができるようになる。