- Roundup
人工と自然の融合ー五島列島で起きるエネルギー革命
alterna 2021/05/15「脱炭素」への動きが国内外で加速するなか、「実質ゼロ」達成のためには温室効果ガスの排出削減だけでなく「ネガティブ・エミッション」ーーとりわけ炭素吸収源となる自然資本(陸や海の生態系;グリーン/ブルー・カーボン)への投資も不可欠だ。(竹村 眞一・京都芸術大学教授/オルタナ客員論説委員)
再エネへの転換促進とともに、風車やメガソーラーの設置が地域の生態系破壊や自然資本の劣化、地場産業との対立などを生まないよう、多様なステークホルダーにとってウィンウインとなるような包括的な事業ビジョンが必要となる。九州の離島で始まった小さな実験は、そんな一石二鳥、一石三鳥の新たな地域経済デザインの先駆例かもしれない。
東シナ海に浮かぶ五島列島の「浮体式」洋上風力発電の実験――。
その旗振り役の渋谷正信さんは、もともと東京湾アクアラインなど海洋建築物の海中工事を請け負う工業ダイバーとして、NHK「プロフェッショナル」はじめ多くのTV番組でも紹介されたトップランナーだ。また自身が手がけた人工構造物が海の生態系を破壊していないか自主的に影響調査を続け、日本全国の海の経年変化データを、各地で海底工事や災害救助などで潜水するたびに独自に蓄積してきた。
その結果、たとえば東京湾アクアラインの人工島を支える海中構造のまわりには以前よりも魚貝の種類や量が増え、「人工物もやり方によっては自然生態系を破壊せず、むしろ豊かにし得る」という事実を実証した。