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なぜデジタルの「絵」が75億円で売れるのか?【連載】NFTが起こすデジタルアートの流通革命(1)
FINEDERS 2021/06/17今年になった急遽に話題になり盛り上がりを見せているNFT。ブロックチェーン技術を活用することで、コピーが容易なデジタルデータに対し、唯一無二な資産的価値を付与し、新たな売買市場を生み出す技術として注目を浴びている。中には数億円の価格が付くデジタルアート作品も登場している。今連載では、日本初にNFTに関する書籍を出版した足立明穂氏がNFTの基礎知識、暗号資産との違い、国内外のNFTマーケットプレイス、なぜデジタルデータに数億円といった価値が付くのかなどについて徹底解説する。
高額取引されるデジタル・アート
今年の3月、Beepleというデジタル・アーティストのNFT作品が75億円で落札されたというニュースが世界中を駆け巡りました。バブルの時代に、安田海上保険がゴッホの『ひまわり』を53億円で落札したときも大騒ぎでしたが、今回は、金額もさることながら、「Beepleって誰?」、「NFTって何?」という状態になっています。
日本でも、VR(仮想空間)アーティストのせきぐちあいみさんのVRアート作品が1300万円で落札されたり、セクシー女優の波多野結衣さんのデジタル写真集が数分間で完売し、総額1.6億円になったりと、次々と驚くようなことが起きています。
アート以外でも、NFTが利用され、Twitter創業者の一人、ジャック・ドーシーの最初のツィートが3億円で落札されるとか、クリプトキティーズというゲームで誕生するネコのキャラクターが2000万円で売れるといったことも起きています。
数年前から始まったNFTですが、今年になって急速に広がっています。そのNFTが、どのようなものなのか、何ができるのかなど、今回から連載で、分かりやすく説明したいと思います。
連載最初になる今回は、従来のアート作品との比較をしながら、NFTとはなにかを考えてみたいと思います。
ゴッホの絵は、世界で1枚だけ
ゴッホの『ひまわり』が53億円で落札されるのは、作品のすばらしさもありますが、世界に1枚だけのオリジナルであるという希少性にあります。本物が欲しいと思う人が多ければ多いほど、価値が上がり高額で取引されます。
ただ、アート作品には、贋作といわれる偽物も多いのも事実。アート市場の規模は、7.5兆円と言われていますが、一方で、その半分が贋作だそうです。だからこそ、鑑定士といった専門家が、筆のタッチや構図、サイン、使われている素材、保管状態、どこで手に入れたのかなど、多方面から分析し鑑定します。本物となれば、鑑定書を発行し、晴れて本物として認められます。
鑑定書と共にアート作品がオークションに出品されると、そのアーティストの人気や作品のすばらしさ、本物であるというお墨付き、希少価値ということから、高値で落札されるようになるのです。