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椿の油で、森を再生する。島根・出雲で始まっている、静かな革命【ウェルビーイング特集 #11 再生】

IEDAS FOR GOOD 2021/06/18

古くは日本書紀や万葉集にも登場し、古来より日本人に愛されてきた常緑樹、椿(ツバキ)。光沢のある緑色の葉に凛とした赤い花をつける椿は、園芸用の植物として楽しまれるだけではなく、その実からとれる椿油が食用や化粧用など様々な用途に活用され、長らく日本人の生活を支えてきた。

日本の文化や生活とも関わりの深いこの「椿」の魅力に取りつかれ、椿油を通じて人間と自然との関わりを見つめ直し、日本の森を再生していこうと取り組んでいるのが、島根県・出雲市で「椿レボリューション」を展開する志賀厚雄さんだ。

志賀さんは、最高品質の椿油の製造に向けて自ら椿の森づくりに取り組むだけではなく、椿や椿油について学べる講習会や、椿油のハンドセラピーや搾油、椿の森の散策など様々な体験ができる「Guest Salon椿舎」など、椿を軸に様々な事業を展開している。その根底にあるのは、人間と自然との循環を通じて人と人の絆も育み、地域の幸せにつながる「善なる行いの循環」を生み出したいという思いだ。

今回、IDEAS FOR GOOD編集部では、志賀さんに椿との出会いや現在の活動の裏にある思い、椿油と森の再生との関係について、詳しくお話をお伺いしてきた。

椿との出会い

19歳のときにイギリスに渡って環境デザインと古代都市生成史を学び、その後、一度日本への帰国を経てアメリカに移住。シリコンバレーで様々な起業家やクリエイターと交流を重ねながら、CGやITに関わるリサーチャーやコンサルタントとして活躍していた志賀さん。そんな志賀さんが椿と出会ったのは、アメリカから日本に帰国して伊豆大島に移住したときだった。

「アメリカから帰ってきてからは、伊豆大島で循環型の社会づくりに取り組んでいました。伊豆大島は島なので水がなく、ほとんどが火山なので田んぼもありません。何があるかというと、椿が300万本あり、かつてはお米の代わりに椿を年貢にしていました。」

「伊豆大島で椿に出会い、もともとは研究対象として椿を見ていたのですが、3月11日に起こった東日本大震災をきっかけに、いつ死ぬかも分からない世の中だからこそ、いま自分ができることは全てやろうと思い、仕事として椿に関わり始めました。」

「東北にも気仙沼大島という椿のある島があり、大島では椿の種を集めて油を搾っていました。最初は復興支援でこの大島の椿油に関わっていたのですが、徐々にいろいろなことが分かってきました。例えば、椿の種の質は伊豆大島と気仙沼では異なり、絞り方によっても油の質が変わってくること。また、気仙沼ではただ種をとるだけでは事業が成り立たないので、観光に使用したり油を製品化したりなど、6次産業化していく必要がありました。そのようなアドバイスをしているうちに、自ら取り組もうと思い始めたのです。」

伊豆大島での椿との出会い、そして震災、東北での復興支援の経験を経て椿の持つ可能性と魅力に惚れ込んだ志賀さんは、自ら椿油を使った地域循環型の事業づくりに向けて動き始めた。

「まずは自分で油を搾ろうと考え、素人ながらも最高の油を搾ろうと試した結果、すごくよい油ができました。また、量産しようとするとどうしても油の質が落ちてしまうことも分かりました。そこで、油をたくさん売るのではなく、少量でもよいので本当に質のよい油をつくることで椿の存在価値を高め、森の保全につなげようと考えました。」

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