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お金がなくても環境はよくできる?貧困国でアグロフォレストリーを進める「reNature」【ウェルビーイング特集 #9 再生】
IDEAS FOR GOOD 2021/06/12環境にいい行動をしたい。そのために、日々の行動を変えたい。そう思う人はますます増えてきている。デロイトトーマツが2020年に発表した調査によると、ミレニアル世代の半分以上(58%)が公共交通機関の利用を増やし、半数がファストファッションの購入を減らしたと回答し、3分の2(64%)が使い捨てプラスチックの利用を減らしてリサイクルを増やしたと回答した。
人々の行動変容について語るとき、考えなくてはいけない観点がある。環境をよくする以前に、現時点でお金に余裕のない人の存在だ。たとえばアフリカの農村地域で農業で生計を立てている人が、自らの経済状況を度外視して、環境をよくすることを前提に行動するだろうか。取り組むビジネスの方向転換をしたり、環境にいいものを買えたりするのは、結局経済的に余裕がある人に限られるのではないか。
オランダには、環境の再生と経済性の両立に本気で取り組む団体がある。さまざまな地域で農家の再生型の農業への転換を支援する「reNature(リネイチャー)」だ。オランダ人のマルコさん、そしてブラジル人のフェリペさんという二人の起業家によって立ち上げられたこの団体は、アグロフォレストリーの手法を使い、環境を持続可能に保つのではなく、積極的に“再生”する農業である「リジェネラティブ・アグロフォレストリー」に取り組む世界でも稀有な存在である。
はたして、環境をよくすることはお金に余裕のある人じゃなくてもできるのだろうか。「農業」という切り口で、どのような経済状況の人でも環境再生に取り組めるシステムをつくるreNatureの創業者の一人、マルコさんに話を伺った。
環境を再生するアグロフォレストリー
Web広告やデジタルマーケティングの業界で長年働いてきたマルコさん。もう一人の創業者のフェリペさんと環境ビジネスのイベントで出会い、互いに地球資源の限界を感じていたことから、環境を再生するためreNatureを共に立ち上げた。現在は14人のメンバーで、問い合わせがあった農家や企業を対象にオンラインでコンサルティングを行ったり、ワークショップを開いたり、実際の移行に必要なモデルの提供をしたりしている。
アグロフォレストリーとは、農業(アグリカルチャー)と林業(フォレストリー)を組み合わせた言葉だ。樹木を育て、森を管理しながら、そのあいだの土地で農作物を栽培したり、家畜を飼ったりする農業を指す。木でアサイーやマンゴー、その下の農地ではコショウやバナナ、カカオなどを育てるなど多様な作物を時間をかけて育てる手法で、ある程度作物が成長すれば、時期にかかわらず年中収穫が得られるようになる。
この農法には多くのメリットがある。まずは環境面だ。アグロフォレストリーは、木を植え続けながら農業や養豚などを続ける、いわば多様性のある森をつくっていく手法といえる。さまざまな種を一度に育てることで、植物や動物がお互いの恩恵を受けるのだ。たとえば、養豚とカシの木の関係性。カシの木は、栄養価の高いどんぐりを提供して豚の成長の糧となり、優れた豚肉を育てる。同時に、豚の排泄物が堆肥となり、土壌を豊かにさせ、新たなカシの木の種まきができるスペースをつくっていく。そうして成長した生物多様性のある森が、温室効果ガスを吸収し、気候変動の対策になるのだ。
マルコさんらは、食物や飼料の生産だけでなく土地も回復させる「リジェネラティブ・アグロフォレストリー」を提言。以下の5つの目標を掲げている。