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アートの真価と可能性
OCA TOKYO 2021/07/12OCA TOKYOに数多く展示されているアート監修の中心人物は、自らが現代美術家であり、京都芸術大学教授の椿昇さん。アート界の第一線で活躍する椿さんは、この場所にアートをどう存在させ、どんな意味をもたらそうとしたのか。展開されたアート論は、まるでいくつもの人生訓を聞いているかのような、趣深い考察やユニークな発想に満ちたものでした。
丁重にお断りしました。
最初にOCA TOKYOのプロジェクトを聞いたときの印象はいかがでしたか?
兼ねてから信頼しているアートコレクターであり、ご自身の会社としてもOCA TOKYOのプロジェクトに参画されている株式会社TPOのマニヤン麻里子さんから、OCA TOKYOに設置するアート作品の監修を一緒に手伝ってほしいとご連絡をいただいたのが最初です。後日、三菱地所の方と一緒にまだ構想段階の内装やインテリアを見せていただきましたが、即お断りしましたね。そこには、いかにも昔のお金持ちが好きそうな華美な世界が広がっており、今の時代に相応しいカッコよさがまったく感じられませんでした。ですから、第一印象は最悪でしたね…(笑)。
そこからどのような経緯で、引き受けることになるのですか?
すっかり忘れていた頃に「もう一度会ってもらえないか」と再度連絡があったんです。そこで提示された内装デザインは印象がガラッと変わっていて、このプロジェクトにかける本気度が伝わってきました。「これは世の中が変わるぞ」と感じましたね。そして、今度は僕から「本気でやらせていただきます」とお返事をしました。日本国内の多様な作家を社会に紹介するというコンセプトをその場で一緒に決めました。
京・丸の内という場所には、どんな印象を持っていますか?
東京という都市は、実はすごく閉じたエリアだと僕は考えています。その理由は、渋谷、六本木、恵比寿など、それぞれの存在感が肥大化しているからです。例えば、渋谷であれば、渋谷という1つのエリアだけでだいたいの事が足りますよね。そういった閉じ方です。ただ、丸の内は閉じていません。東京駅というハブの存在が大きく、全国から人が集まります。そんな場所にアートが介在できることは幸せなことですし、まるでヴェネツィア・ビエンナーレのようなインパクトを感じます。
アートにとって「場所」は、とても重要なファクターなのですね。
その通りです。ただ残念ながら、日本はこれまで立地や交通網に合わせて文化を発展させていくような思想がありませんでした。多くの日本人にとって、アートはただのインテリアでしかないのです。僕は、アートは世界とつながる窓口だと考えているので、その意味でも丸の内は最適な場所だと思います。