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杉本博司「頃難に思う」(読売新聞4月15日)全文掲載
Odawara Art Foundation/出典:読売新聞 2020年4月15日朝刊 2020/07/02この光景は以前どこかで見たように思う、街から人影が消え、人々が疫病の恐怖に慄き、不気味に静まり返っている。そうだその記憶は私の記憶ではなく人類の記憶だ。あのヨーロッパの人口の1/3ほどが失われたとされるペストの大流行だ。パンデミックという言葉もその時生まれた。その爆発的な流行は14世紀からはじまり断続的に17世紀まで続いた。私はその記憶の断片を写真に撮ったことがある。かつてロンドンの蝋人形館マダム・タッソーには「恐怖の部屋」と呼ばれる部屋があった。その中にプラーグと題されたペスト流行中のロンドンが再現されていたのだ。
京都市京セラ美術館で「杉本博司 瑠璃の浄土」展を開催中の氏が、作品作りの中で考えていること。アーティストは、その観察力を持って社会に「問い」を投げかけています。